中小企業の採用担当者向け、失敗しない人材採用シリーズです。
今回は、中小企業に良くありがちな即戦力採用の落とし穴についてお話しします。
求人募集をするときに、【募集要項】を検討すると思いますが、給料が高いけど業界経験10年と、給料は安いけど業界経験1年。御社ではどちらを【募集要項】としますか?
中途採用のメリット
中小企業が求人募集を行うときは、本当に今すぐに人材が欲しい!と強く願うときだと思います。
そして、事前に採用活動(求人募集をするための下準備)を行っている会社も少ないと思いますので、採用でも時間をかけたくないし、採用後も時間をかけずに即実務に入ってもらいたいと思うのではないでしょうか。
中途採用のメリットは、会社が欲しい能力を、他社での経験によって補うことが出来、採用した後の教育の時間が少なくて済むことに尽きると思います。
たとえば、未経験者を教育し、一人立ちに三ヶ月かかるのに対し、経験者は教育後、一ヶ月で一人立ちできることです。
教育時間が短縮するということは、教育者が新入社員に付き添う時間も減るため、会社にとっては二度おいしい訳です。
しかし、メリットがあるからにはデメリットもあります。御社にとって良い判断が出来ればと思います。
中途採用こそ時間をかけよう
実際のところ、中途採用も新卒と同じように時間をかけることになると思います。というか、かけるべきです。
たしかに業務についての能力はあるかもしれませんが、一緒に働く場合、能力だけに捕われてはいけません。
中途採用で絶対に無視して欲しくないことは、能力とは別の【人間性】です。
ここを無視して採用してしまうとじわりじわりと会社自体に影響を与えかねませんので、とても重要となります。
例えば、能力は高くても仕事のやり方が異なるとどうでしょう。上手くいくと思いますか?
自社商品の法人営業を募集した場合、個人宅訪問営業の経験者を雇ったとします。
個人宅訪問営業とは、ここでは、受験生を持つ家庭に教材を売る人だとしましょう。
経験ありますか?夕食ときに自宅に現れ、断っても帰ろうとしない粘る営業を。
人の迷惑も考えず、家に上がりこんで、泣きついて売れるまで帰れない営業を長年してきた人が、自社商品の法人営業を行い、お取引様相手に同じことをしたらどんな影響が出るでしょう。
次に大企業出身のエリート営業のやり方だったらどうでしょうか。
社名やブランド名で売れてしまう、売れるのが当たり前の畑で働いてきた人に、中小企業で新規事業を立ち上げ、新規営業の開拓がミッションだった場合、テレアポ、飛び込み営業を受け入れることが出来るでしょうか。
社名やブランド名で売れていることを自分の実力と勘違いされている方は多くいらっしゃいます。
また、売ることの能力はあったとしても、その会社に合った営業が出来ないと意味がありません。
中途採用には直属の上司をおくこと
経験者を採用する場合、上司になる人が最も重要となります。
例えば大企業である程度の役職で、ある程度の給料をもらっていて、ある程度経験がある人が、早期退職で会社を離れることになり、「もう一度花を咲かせたい」と中小企業に応募してきた場合、大企業と中小企業のギャップに驚かせられると思います。
応募者は、社名、ブランド名で売れることが当たり前の世界に居たので、中小企業の地道な活動や、時には部門を超えた事まで自分でやらなければならないことに苦労すると思いますし、受け入れる企業としても驚かせられます。
良い意味でも悪い意味でも活かせるのは、直属の上司しか居ません。
そして、その上司は決して揺るがない人でないとなりません。
どんなに実力がある人でも多くの裁量を持たせることなく、3年から5年は人の下で働いてもらうようにした方が良いです。
一番やってはいけないのは、社長直下にすることです。
社長承認を盾に活動されると、他部門の部門長からの非難も強くなりますので、注意が必要です。
間違った採用をしてしまった後は
経験者は、入社と同時に自分の立ち位置を確認します。
誰の下で誰の上なのか?直属の上司には、とても使いやすい部員かもしれません。しかし、一般社員には横柄な態度かもしれません。
頭が良い人が多く、ずる賢さもあるので、試用期間中は大人しく本採用にならないと気付かないこともあるかもしれません。
人事担当として上司からも部下からも同僚からも正しい情報収集を行い、改善が必要な場合は、改善してもらうように伝えるべきですし、改善できないようなら、経営者に報告し対処を考えることも必要でしょう。
知っていながら野放しにすることだけは避けなければなりません。
会社にとってどうするべきか、人事担当として判断することもあると思います。
さいごに
中小企業は、もともと新卒よりも中途採用が多いと思いますが、落とし穴にはまるときは、会社として新しい舵をきるときの人材採用です。
部長、課長クラスを採用するときは、メリットとデメリットを十分に考慮します。
このときこそ、しっかりと事前に採用基準を決めておくことをおすすめします。